カソードフォロワのIpカーブ計測のコツがなんとなく分かってきたような気分なので、5極管では下の図のような回路で計測することにしました。
    
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このようにして出てきたカーブが下の図になります。ちなみにEg2の値は、変化させてもあまり動作に影響を与えません。これは通常の5極管動作と大きく異なります。



           


5極管動作のカソードフォロワー特性もまた、見たことの無い面白いカーブです。そこで3極管接続と同様、実用的でない0V50Vのカーブを省略すると、下の図のようになります


           


このグラフによるとμ=0,9程度で全体の印象は3極管と似ています。これを見て何か思い出しませんか?強いP-G不帰還をかけた5極管は超3極管特性になります。

1970年代終わりごろに、バイポーラトランジスタは超3極管特性だという記事がラジオ技術誌に掲載され、多くを期待した時期もありましたが、見せられた特性カーブは、エミッターフォロワーのものでした。

しかしどれだけ3極管特性に似ていても、これは単なる単一動作曲線の平行移動に過ぎないということを認識しておいてください。

その上で「やっぱり超3極管はイイ音だなー。」と思えればそれで良いのであって、例えるなら「超マツタケ味」や、カラメルなどで合成した「超ウイスキー」がウマい!と感じるのは自由ですが、そこにマツタケやモルトは入っていないのです。


            
                        超3極管特性!?

話をカソードフォロワーに戻して5極管接続のカーブを眺めてみると、3極管接続の時よりμが僅かに大きい、つまり5%ほど内部抵抗が高いとわかります。

そこでもう一度比較のため3極管特性を見てみましょう。


           


これによって判るのは、5極管特性の方が動作電流の範囲が若干広いという点です。しかしそのためにカソード電位にフロートさせたG2電圧を用意するのは、あまり有利とはいえません。

以上の実験から、回路の妙味を楽しむのでなければ、あえて5極管によるカソードフォロワーを行う必要はないと予測できます。

実際に1kHzの信号を入れて、入出力特性や、出力インピーダンスを実測した結果が下の表になります。また出力インピーダンス計測は100Ω負荷によるON−OFF法です。


ゲイン(倍) 出力インピーダンス
5極管 0,90 200Ω
3極管 0,82 173Ω


予測値と若干ずれている部分もありますが、3極管接続動作と5極管動作では、カソードフォロワーにおいて、それほど差が出ないのだと判ります。

周波数特性は、どちらも200kHzあたりまでフラットでした。次回は6L6の計測ついでに、今回のテーマから外れますが、別の計測を行います。




つづく


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その2、 5極管接続を計測する